犬の腎臓病の食事は手作りできる?
腎臓病の手作り食を獣医師が解説
犬の腎臓病の食事を手作りで用意するのは、極めて困難であると言われています。
犬の腎臓病の食事について、手作りするのが困難な理由や、おすすめの腎臓病療法食などを獣医師が詳しく解説します。
目次
犬の腎臓病の食事をおうちで手作りしてもいい?
腎臓病の犬の食事は、タンパク質などの栄養素を調整して与える必要があるため、専門的な栄養知識が必要です。
そのため、飼い主が腎臓病用の食事を手作りで用意するのは極めて困難です。
腎臓病の犬の食事は、栄養素を正確に計測・計算する必要があります。
そのため、手作りで食事を用意するよりも、最適な栄養・カロリーを配合した腎臓病用療法食の活用をおすすめします。
犬の腎臓病の食事を手作りするのが困難な5つの理由
犬の腎臓病の手作りレシピで使われる肉・野菜などの食材には、腎臓病の犬に負担をあたえる以下の栄養素が多く含まれています。
- タンパク質
- リン
- ナトリウム
- カリウム
腎臓病の犬がこれらの栄養素を多く摂取すると、腎機能に負担がかかり、腎臓病の進行を早めてしまう可能性があります。
さらに、腎臓病の犬の食事は、健康維持に必要なエネルギーを摂取するための調整も必要です。
理由1:肉などに含まれるタンパク質の制限
鶏肉や豚肉、牛肉などの肉類には、タンパク質が多く含まれています。
腎臓はタンパク質を代謝し、最終的に尿素に加工して、尿とともに体外へ排出します。
しかし、腎臓病により腎機能が低下すると、残された腎機能のみでタンパク質の有害代謝産物を排泄することになり、腎機能に負担がかかります。
そのため、腎臓病の食事は、腎機能への負担を抑えるため、タンパク質を適度に制限減する必要があります。
理由2:干し肉などに含まれるリンの制限
干し肉や鮭、小魚などの魚類には、リンが含まれています。
腎臓病の犬は、腎機能の低下によりリンを効率的に排出できなくなります。
そのため、腎臓病の犬がリンを過剰に摂取すると高リン血症を引き起こし、死亡リスクが増加するとされています。
また、リンを制限した食事を与えた腎臓病の犬は、腎機能低下の進行がゆるやかになり、生存率が上昇したという報告があります。※1
そのため、腎臓病の犬にとって、リンの制限は特に重要です。
理由3:魚類などに含まれるナトリウムの制限
魚介類、牛乳などの乳製品には、ナトリウムが含まれています。
腎臓病の犬は腎機能の低下により、ナトリウムの排出能力が低下します。
そのため、ナトリウムを過剰摂取すると血圧上昇などを引き起こし、腎臓に負担をかけてしまいます。
また、腎臓病と合わせて心臓の病気も持つ犬は血圧上昇が大きな負担となるため、ナトリウムを適度に制限した食事が必要になります。
理由4:野菜などに含まれるカリウムの制限
ほうれん草やかぼちゃ、さつまいもなどの野菜には、カリウムが含まれています。
慢性腎臓病が進行した犬はカリウムを十分に排泄することができないため、カリウムを過剰摂取すると「高カリウム血症」や、カリウムを大量に排出してしまう「低カリウム血症」を発症することもあります。
腎臓病による高カリウム血症は猫で多く見られますが、犬ではあまり発症しないため、カリウムを極端に制限する必要はありません。
しかし、腎臓病が進行した犬の場合は、カリウムの摂取量を制限する必要があります。
理由5:健康維持に必要なエネルギー摂取
慢性腎臓病の犬は、ステージが進行するほど食欲低下の症状がみられます。
また、腎臓病の食事管理でタンパク質を制限すると、食事から得られるエネルギー量が低下してしまいます。
そのため、腎臓病の犬の食事は、健康維持に必要なエネルギー量を満たすためのカロリー計算が必要です。
犬の腎臓病の食事には療法食の活用がおすすめ
「犬の腎臓病の食事を手作りするのが困難な5つの理由」で説明したように、腎臓病の犬の食事にはさまざまな栄養素の調整が必要です。
手作りの食事でこれらの栄養素を調整するのは困難なため、犬の腎臓病の食事には療法食の活用がおすすめです。
犬の腎臓病の療法食とは、腎臓の負担となる栄養素(タンパク質・リン・ナトリウム・カリウム)を適量に抑え、必須脂肪酸(オメガ3系不飽和脂肪酸)やエネルギーの量を調整したフードです。
一般的なドッグフードとは異なり、獣医師の診断・指導に基づき、食事療法として与えます。
必須脂肪酸(オメガ3系不飽和脂肪酸)は、腎臓を構成する「ネフロン」の毛細血管の炎症を緩和することが知られています。
そのため、新鮮なオメガ3系脂肪酸を含んだ食事を与えることで、腎機能低下の進行を遅らせる効果があると報告されています。※2
腎臓の療法食の他にも、心臓・膵臓・皮膚・消化器、尿路結石症や食物アレルギーのサポートなどさまざまな療法食があり、症状に合わせて栄養バランスの量が調整されています。
獣医師が手作りした療法食も
犬の腎臓病療法食には、獣医師が開発した、安心・安全な手作り療法食タイプもあります。
手作りタイプの療法食は、腎臓の負担となるタンパク質やリンを抑え、健康維持に必要な量の栄養素やエネルギーなどを配合しています。
鮮度の高い鹿肉や穀類、野菜などの厳選された食材を使い、保存料や着色料などの添加物を使用していないものもあります。
また、国内工場の徹底した品質管理体制のもと、職人が手作りで製造しており、専門機関での厳格な成分検査や放射能検査を実施した、安心で安全なフードもあります。
安心・安全な手作りの腎臓病療法食で、愛犬のQOLを高めよう
犬の腎臓病は、一度進行すると腎機能の回復はできません。そのため、食事管理で腎臓病の進行を遅らせることが重要です。
手作りの食事を与えたい方もいると思いますが、腎臓病に最適な栄養素を計算・調整するのは極めて困難です。
腎臓病の犬ために最適な栄養素を配合した安心・安全な手作りの療法食で、愛犬のQOLを高めてあげましょう。