犬の肝臓・腎臓に良い食事について獣医師が解説

肝臓腎臓に良い食事 犬

犬の肝臓・腎臓に良い食事について獣医師が解説

犬の肝臓と腎臓は深く関係しています。
そのため、どちらかの臓器の機能が低下すると、もう一方の臓器にも負担をかけることがあります。
そこで、このページでは犬の肝臓病、腎臓病に良い食事や、原因、症状、おすすめの療法食について解説します。

犬の肝臓病・腎臓病に良い食事とは?

犬の肝臓病・腎臓病には、タンパク質の摂取量を調整し、健康維持に十分な栄養素とカロリーを摂取できる食事が良いとされています。
肝臓と腎臓は、体にとって不要な成分を分解し、体外へ排出する重要な働きをしています。

  • 肝臓:タンパク質を代謝するときに出るアンモニアを分解
  • 腎臓:タンパク質を代謝するときに出る尿素を排出

タンパク質を過剰に摂取すると肝臓・腎臓に負担がかかり、肝臓病や腎臓病を発症するリスクが高まります。

犬の肝臓と腎臓の関係

肝臓腎臓に良い食事 犬犬の肝臓は、血液中の有害物質を分解する働きをしています。
しかし、なんらかの原因により肝機能が低下すると、有害物質を分解できなくなります。
その結果、有害物質が体内にたまり、血液に含まれて体内を循環してしまいます。

腎臓は血液に含まれる老廃物などをろ過する働きがあります。
肝機能が低下して有害物質を含んだ血液が流れこむと、腎臓がろ過する有害物質が増えて腎機能に負担がかかってしまいます。

犬の肝臓とは?

肝臓腎臓に良い食事 犬犬の肝臓病とは、肝臓の機能が低下し、肝臓本来の働きができなくなる病気です。
犬の肝臓は、タンパク質の合成や栄養の貯蔵、有害物質の分解、食べ物の消化に必要な胆汁の生成や分泌など、多くの働きを担っています。

  • 肝炎
  • 肝硬変
  • 肝臓腫瘍

…など、さまざまな種類があります。

犬の肝臓病の原因

犬の肝臓病は、さまざまな原因により引き起こされるため、特定するのが難しい病気です。
肝臓病の主な原因は以下になります。

  • 犬伝染性肝炎
  • レプトスピラ症
  • 遺伝性
  • 先天性
  • 交通事故などによる腹部損傷
  • 薬物・毒物を食べたことによる影響

 

犬の肝臓病の症状

犬の肝臓病の症状は、主に以下のようなものです。

  • 食欲が低下して痩せる
  • 嘔吐や下痢
  • 元気がなくなる
  • 白目部分や皮膚が黄色くなる黄疸
  • おしっこの色が濃くなる

…など。
犬の肝臓病は肝臓機能の75%が機能しなくなるまで症状が出ません。
愛犬の異変に気づいたときにはすでに病気が進行してしまっているため、沈黙の臓器とも呼ばれています。
気になる症状が現れた場合は、すぐに動物病院で受診しましょう。

犬の肝臓病の治療

犬の肝臓病の治療は、原因や病気の種類によって方法が異なります。

【症状が重症の場合】 症状が重い場合は、動物病院での投薬や輸液、手術など、迅速な治療が必要です。
【症状が重症ではない場合】 症状が重症ではない場合は、肝臓の負担を減らすための食事療法が重要な治療です。

 

犬の肝臓病に良い食事

肝臓腎臓に良い食事 犬肝臓病により肝機能が低下すると、タンパク質から発生するアンモニアを十分に分解できなくなります。
分解できなかったアンモニアは血液中にたまり、意識障害などを引き起こす危険があります。
そのため、肝臓病の犬はタンパク質の摂取量を適度に制限する必要があります。

しかし、タンパク質は肝臓の再生に必要な栄養素です。
そのため、良質なタンパク質を適度に与えることが必要です。

また、タンパク質を制限することにより、エネルギーの摂取量が減ってしまいます。
健康維持に必要なカロリー量を補うため、炭水化物や脂質でエネルギーを補給する必要があります。

犬の肝臓病におすすめの食事

犬の肝臓病の食事にはタンパク質のコントロールに加え、適切な栄養バランスが求められます。
そのため、肝臓病の犬の食事を手作りで毎食用意するのは極めて困難です。
肝臓病の犬に最適な栄養バランスを配合した療法食を活用しましょう。

療法食は、一般的なドッグフードとは異なり、獣医師の診断・指導に基づいた食事療法として与える必要があります。
療法食は他にも、腎臓・心臓・膵臓、尿路結石症や食物アレルギーのサポートなどさまざまな療法食があり、症状に合わせて栄養バランスの量が調整されています。

その為、犬の肝臓病療法食を与える事をおすすめします。

犬の腎臓病とは?

肝臓腎臓に良い食事 犬犬の腎臓病とは、腎機能が低下し、腎臓本来の働きができなくなる病気です。
腎臓は、血液の老廃物や余分な水分を尿として排出するなど、体の活動を支えるための重要な働きを担っています。

 

犬の慢性腎臓病の原因

犬の慢性腎臓病の原因は、加齢などによりネフロンが傷つき、腎機能が低下することによるものです。
犬の慢性腎臓病は中年齢〜高齢のシニア犬では一般的な疾患で、犬の年齢が5〜6歳以上で発症率が増加する傾向にあります。

 

犬の慢性腎臓病の症状

犬の慢性腎臓病の主な症状は、以下のようなものです。

  • 散歩に行きたがらない
  • 食欲の低下
  • 寝ている時間が増える

…など。

犬の慢性腎臓病は、

  • 血液検査によるクレアチニン(CRE)
  • 対称性ジメチルアルギニン(SDMA)

以上2つの濃度によって4つのステージに分類され、ステージの進行状況によって症状が変化します。

しかし、犬の慢性腎臓病は、ネフロンが半分以上機能しなくなるまで症状が現れません。
そのため、犬がシニア期を迎える5〜6歳頃から定期的に検査をおこない、早めに発見・対策することが重要です。

犬の慢性腎臓病の治療法

犬の慢性腎臓病は、一度進行すると腎機能を回復できません。
そのため、腎臓に負担をかけない食事療法などで、慢性腎臓病の進行を遅らせるための治療をします。

適切な食事療法には犬の慢性腎臓病の進行を遅らせる効果があり、食事療法をおこなわなかった慢性腎臓病の犬よりも寿命が長くなるとの報告があります。※1

※1:Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic renal failure in dogs

 

犬の腎臓病に良い食事

犬腎臓病 療法食腎臓病の犬には、腎機能の負担となる以下の栄養素を調整した食事が良いとされています。

  • タンパク質
  • リン
  • ナトリウム

慢性腎臓病の犬は食欲低下の症状が現れることにくわえ、食事管理でタンパク質を制限するため、食事から得られるエネルギー量が低下してしまいます。
そのため、腎臓病の犬には、健康維持に十分なエネルギー量を摂取するための食事管理が必要です。
さらに、新鮮なオメガ3系不飽和脂肪酸を多く含んだ食事を与えることで、慢性腎臓病の進行を遅らせる効果があるといわれています。※2

※2:Beneficial effects of chronic administration of dietary ω-3 polyunsaturated fatty acids in dogs with renal insufficiency

ただし、オメガ3系不飽和脂肪酸は酸化しやすい栄養素のため、食事の際にフードに加えるようにしましょう。
また、腎臓病により食欲が低下している場合は、オメガ3系脂肪酸を無理に食べさせるのではなく、タンパク質やリンの制限を優先することをおすすめします。

 

犬の腎臓病におすすめの食事

犬の腎臓病の食事は、腎臓の負担となるタンパク質・リン・ナトリウムを適度に制限して、健康維持に十分なエネルギー量を補う必要があります。

犬の肝臓病におすすめの食事」でも説明したように、飼い主がこれらの栄養素を手作り食で調整するのは困難です。
犬の腎臓病療法食を活用しましょう。

腎臓の健康をサポートするための療法食では、腎臓の負担となるタンパク質やリンを抑え、健康維持に必要な量の栄養素やエネルギーなどを配合されています。

 

愛犬の肝臓・腎臓は療法食でサポート

犬の肝臓病・腎臓病の食事には、タンパク質の適切な調整が重要です。
しかし、飼い主がタンパク質の調整を手作り食で行うのは非常に困難です。
療法食を活用し、愛犬のQOLを高めてあげましょう。

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獣医師・宿南章獣医師

投稿者プロフィール
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
   
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
   
【所属団体】 The Royal Society for the Protection of Birds 会員

日本盲導犬協会 会員

野生動物救護獣医師協会 正会員
   
【プロフィール】 1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。

日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。

   
【研修・研究内容】 1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習

1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習

1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)

1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)

1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)

2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修
   
【論文】 Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004
   
【著書】 「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。

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