犬の腎臓病療法食のウェットフードの特徴は?ドライフードとの違いも解説

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犬の腎臓病療法食のウェットフードの特徴は?ドライフードとの違いも解説

犬の腎臓病療法食のウェットフードについて解説します。
ウエットフードの種類やドライフードとの違い、腎臓病療法食が必要な理由や食べない時の対処法についても以下で詳しく紹介します。

犬の腎臓病療法食のウェットフードとは?
ウェットフードの特徴

犬腎臓,療法食 ウェット犬の腎臓病療法食のウェットフードとは、腎臓病の食事療法を目的とした療法食で、水分含有量が75%以上のものです。
ウェットフードは風味が良く嗜好性が高いため、犬の食いつきが良くなる傾向があります。
そのため、腎臓病で食欲が低下した犬におすすめのフードです。

 

犬の腎臓病療法食ウェットフードの種類と、ドライフードとの違い

犬腎臓,療法食 ウェット犬の腎臓病療法食のウェットフードには、3つの種類があります。

  1. 缶詰
  2. レトルトパウチ
  3. アルミトレー

ウェットフードの種類と、ドライフードとの違いを以下の表にまとめました。

区分 定義 分類
ドライ 製品水分10%程度以下のフード。加熱発泡処理された固形状のものがほとんどです。水分含有量が13%以上では、カビが生えたりするので12%以下に保つ必要があり、安全性に配慮して多くは水分含有量10%以下となっています。 ドライ
ソフトドライ 製品水分25~35%程度のフードで、加熱発泡処理されています。しっとりさを保つために湿潤調整剤を使用します。 ソフトドライ
セミモイスト 製品水分25~35%のフードで、押し出し機などで製造され、発泡していないものです。しっとりさを保つために湿潤調整剤を使用します。 セミモイスト
ウェット缶詰 水分75%程度で、品質保持のために殺菌工程を経て、缶詰に充填されたフード。 ウェット
ウェットその他 水分75%程度で、品質保持のために殺菌工程を経て、アルミトレーやレトルトパウチに充填されたフード。 ウェット

※出典:一般社団法人ペットフード協会 ペットフードの種類

ウェットフードはドライフードに比べ水分が多く、やわらかい食感のフードです。
腎臓病により食欲が低下し、食べ物を噛むのがつらくなった犬も食べやすいのが特徴です。

しかし、食事療法の初期から腎臓病療法食のウェットフードを与えるのはおすすめしません。
なぜなら、ドライフードはウェットフードよりもエネルギー密度が高く、栄養素を効率的に摂取できるためです。
そのため、腎臓病フードへ切り替える際はドライフードからあたえてみましょう。
また、ドライフードをあまり食べない場合は食欲をそそるような工夫をしてあげましょう。

それでも腎臓病療法食を食べない場合は獣医師に相談し、ウェットフードを取り入れるか検討してみましょう。

 

そもそも犬の腎臓病療法食とは?

犬腎臓,療法食 ウェット犬の腎臓病療法食とは、腎臓の負担となる栄養素(タンパク質ナトリウムリン)を制限し、オメガ3系不飽和脂肪酸エネルギーバランスを調整したフードです。
療法食は、一般的なドッグフードとは異なり、獣医師の診断・指導に基づいた食事療法として与える必要があります。

ペットフードは「ペットフードの表示に関する公正競争規約」により、以下の4つに分類されています。

  • 総合栄養食
  • 療法食
  • 間食
  • その他の目的食

このうち、療法食は ”治療の内容に合わせてペットフード中の栄養成分を調整し、治療を補助する目的で提供されるペットフード” として定義されています。

 

タンパク質の制限

腎臓病により腎機能が低下すると、残された腎機能でタンパク質の有害代謝産物(尿素など)を排泄するため、腎臓に負担がかかります。
そのため、腎臓病の犬にはタンパク質を制限した食事が必要になります。

しかし、タンパク質は犬の食事に必要不可欠な栄養素です。
そのため、腎臓病療法食は、腎臓病の犬に適したタンパク質の量を摂取できるよう調整されています。

 

ナトリウムの制限

慢性腎臓病の犬は、ナトリウムの排出能力が低下していきます。
そのため、慢性腎臓病の犬がナトリウムを過剰に摂取すると血圧上昇などを引き起こし、さらに腎臓に負担をかけてしまいます。

とくに、心臓病も持つ犬は血圧上昇が心臓の負担になるため、ナトリウムの摂取に注意が必要です。

ですが、ナトリウムは細胞の機能に欠かせない栄養素です。そのため、腎臓病療法食で最適なナトリウム量に調整された食事を与えることが重要です。

 

リンの制限

慢性腎臓病の犬はリンを効率的に排出できなくなります。
そのため、リンを過剰摂取すると高リン血症を引き起こし、死亡リスクが増加するとされています。
逆に、リンを制限した食事を与えた腎臓病の犬は、腎機能低下の進行が遅くなり、生存率が上昇したという報告があります。※1

そのため、腎臓病の食事療法においてリンの制限は特に重要です。
しかし、リンは骨や歯、細胞などをつくる大切な栄養素であるため、適度に摂取する必要があります。
そこで、リンが最適な量に制限された腎臓病療法食を与えることが大切です。

※1:Beneficial effects of dietary mineral restriction in dogs with marked reduction of functional renal mass.

 

オメガ3系不飽和脂肪酸を含む

オメガ3系不飽和脂肪酸は、ネフロンの毛細血管の炎症を緩和する効果があるという報告があります。※2
犬の慢性腎臓病は、腎臓を構成するネフロンが傷つき、腎機能が低下することが原因で起こります。

オメガ3系脂肪酸を含んだ食事を与えることでネフロンの炎症を緩和して、慢性腎臓病の進行を遅らせる効果があると期待されています。
ただし、オメガ3系不飽和脂肪酸は酸化しやすいため、与え方に注意が必要です。

※2:Beneficial effects of chronic administration of dietary ω-3 polyunsaturated fatty acids in dogs with renal insufficiency

 

エネルギーバランスの調整

腎臓病の犬は食欲が低下することに加え、タンパク質を制限する必要があるため、食事から得られるエネルギー量が低下してしまいます。
そこで、腎臓病の療法食は、少量でも多くエネルギーをとれるように調整されています。

 

適切な食事療法は慢性腎臓病の進行を遅らせる効果がある

犬の慢性腎臓病とは、加齢などにより腎機能が低下し、腎臓本来の働きができなくなる病気です。
犬の慢性腎臓病は、一度進行すると腎機能を元に戻すことはできません。
そのため、腎臓に負担をかけない食事療法などで、慢性腎臓病の進行を遅らせるための治療をおこないます。

適切な食事療法は、慢性腎臓病の進行を遅らせる効果があり、食事療法を行わなかった慢性腎臓病の犬のよりも寿命が長くなるとの報告があります。※3

※3:Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic renal failure in dogs

 

犬が腎臓病療法食を食べないときは

犬腎臓,療法食 ウェット腎臓病の犬はステージが進むほど食欲が低下します。
また、療法食は通常のドッグフードと味が異なるため、食いつきが悪くなることもあります。
そのため、療法食へ急に切り替えると愛犬が食事をあまり食べなくなる可能性があります。

愛犬が腎臓病療法食を食べないときは、いきなりウェットフードを与えるのではなく、ドライフードに以下のような工夫を試してみましょう。

  • フードを温めて匂いを増す
  • ドライフードに水分を加え、ウェットフードのように柔らかくする
  • 食事を少量ずつ数回に分けてあげる

腎臓病用の療法食への切り替えは、1週間〜1カ月程度の時間をかけて、これまでのドッグフードから療法食へ少しずつ変更していくのがポイントです。
普段食べているドッグフードなどの食事に、腎臓病用の療法食を徐々に混ぜるなどして、少しずつ慣らしていきましょう。

 

犬の腎臓病療法食のウェットフードを与えてみよう

犬の腎臓病療法食のウェットフードは、非常に嗜好性が高いフードです。
そのため、食欲が落ちた愛犬でも、療法食のウェットフードであれば食いつきがよくなる可能性があります。
腎臓病療法食のドライフードを食べない場合は獣医師に相談し、療法食のウェットフードを与えてみるのもいいでしょう。

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獣医師・宿南章獣医師

投稿者プロフィール
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
   
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
   
【所属団体】 The Royal Society for the Protection of Birds 会員

日本盲導犬協会 会員

野生動物救護獣医師協会 正会員
   
【プロフィール】 1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。

日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。

   
【研修・研究内容】 1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習

1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習

1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)

1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)

1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)

2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修
   
【論文】 Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004
   
【著書】 「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。

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