犬の心臓病・腎臓病の食事について解説|おすすめの療法食も

犬心臓病 腎臓病食事

犬の心臓病・腎臓病の食事について解説|おすすめの療法食も

犬の心臓病・腎臓病は年齢が上がるにつれて発症しやすい病気です。
心臓病・腎臓病で気をつけたい食事や、心臓病・腎臓病の原因や症状、おすすめの療法食について解説します。

犬の心臓病・腎臓病で気をつけたい食事

犬の心臓病と腎臓病では、ナトリウムとリンの量を制限した食事が重要です。
心臓病・腎臓病を発症するとナトリウムとリンの排出能力が下がり、臓器に負担がかかり、病状がさらに進行します。
そのため、心臓病・腎臓病の犬は、食事療法でナトリウムとリンの摂取量を制限する必要があります。

心臓病・腎臓病の食事には、獣医師の診断にもとづく療法食の活用をおすすめします。

犬の心臓病に良い食事
犬の腎臓病に良い食事

 

犬の心臓病・腎臓病はシニア期に発症しやすい病気

犬心臓病 腎臓病食事犬の心臓病と腎臓病はシニア期(5〜6歳)に発症しやすく、さらに併発しやすい病気です。

病名 併発しやすい病気
腎臓病 腎臓機能が正常に働かなくなると心臓や血管に負担がかかるため、心臓病を発症しやすくなる
心臓病 心臓の働きが弱まると腎機能に負担がかかるため、腎臓病を発症しやすくなる

以上のことから、心臓病か腎臓病になると、もう一方の病気も併発するリスクが高まります。

 

犬の心臓病とは

kidney-heart-ph02犬の心臓病とは、心臓の筋肉や弁が正しく動かなくなることで、全身に血液を効果的に送り出せなくなる病気です。
心臓は、全身に血液を送り出すことで各臓器や組織に栄養を供給し、二酸化炭素や老廃物などを回収して肺や腎臓へ排出する大切な役割を担っています。
そのため、心臓病を発症すると、全身に十分な栄養素を届けられなくなるおそれがあります。

 

犬の心臓病の原因は?

犬の心臓病の原因はひとつとは限らず、以下のようなさまざまな要因が関係していると考えられます。

  • 先天性の奇形
  • 先天的要因(犬種・性別)
  • 腎臓病・内分泌疾患などの病気
  • 寄生虫(フィラリア)
  • 肥満

…など。

さまざまな原因の中でも、腎臓病と心臓病は特に深くかかわりがあるとされています。
犬の心臓病・腎臓病はシニア期に発症しやすい病気」で説明したように、心臓病か腎臓病になると、もう一方の病気も併発する傾向があります。

 

犬の心臓病の症状は?

犬の心臓病の特徴的な症状は、以下のようなものです。

  • 動きたがらない、元気がない
  • 咳が止まらない
  • 呼吸困難
  • 失神

…など。

犬の心臓病は、初期段階では症状がほとんど現れません。
心臓は極めて重要な臓器であるため、なんらかの異常が生じた場合、正常な状態を保つように機能を調節する代償能力が働きます。
そのため、飼い主が症状に気づいた時には、すでに心臓病が進行している場合がほとんどです。

心臓病はシニア期になると発症しやすいため、犬の年齢が5〜6歳になった頃から病院で定期検診を受けるようにしましょう。

 

犬の心臓病の治療法は?

犬の心臓病の治療法は、手術や投薬、食事療法などです。
心臓病の手術は費用が高額であることにくわえ、心臓病の手術に対応できる動物病院が少ないため、あまり現実的な方法ではありません。
そのため、心臓病の進行を遅らせるための投薬や、食事療法などによる治療が基本です。

 

犬の心臓病に良い食事

ナトリウム・クロール・リンの制限

心臓病により心臓の働きが低下すると、塩分を効率的に排出できなくなり、心臓に負担がかかります。
そのため、ナトリウムやクロールといった塩分の摂取を適度に制限する必要があります。
また、腎臓病と併発しやすい心臓病は、腎臓の負担となるリンの制限も必要です。
リンを過剰に摂取すると高リン血症を引き起こし、腎機能がさらに低下して死亡リスクが増加するとされています。

 

L-カルニチン・タウリンの摂取

L-カルニチンとタウリンは、心臓機能にとって重要な栄養素です。
犬の心臓病のひとつである拡張心筋症では、L-カルニチンとタウリンの不足が見られます。
そのため、犬の心臓病の食事管理では、L-カルニチンとタウリンを含む食事が推奨されます。

 

犬の慢性腎臓病とは?

犬心臓病 腎臓病食事腎臓は、血液の老廃物や余分な水分を尿として排出するなど、体の活動を支える重要な働きを担っています。
犬の慢性腎臓病とは、これらの腎臓本来の働きができなくなる病気です。

犬の慢性腎臓病の原因は?

犬の慢性腎臓病の主な原因は、腎臓を構成するネフロンが加齢により傷つき、腎機能が低下することによるものです。
犬がシニア期(5〜6歳以上)になると発症率が高くなる傾向があり、高齢犬・シニア犬では一般的な疾患とされています。

 

犬の慢性腎臓病の症状は?

犬の慢性腎臓病の特徴的な症状は、以下のようなものです。

  • 食欲が落ちて痩せる
  • 散歩に行きたがらない
  • 寝ている時間が増える

…など。

犬の慢性腎臓病は、

  • 血液検査によるクレアチニン(CRE)濃度
  • 対称性ジメチルアルギニン(SDMA)濃度

…など。

の2つによって4つのステージに分類され、ステージの進行状況によって症状が変化します。
しかし、犬の慢性腎臓病はネフロンが半分以上機能しなくなるまで症状が現れません。

そのため、愛犬の異常に気づいたときには、すでに病状が進行しているケースが多くあります。
気になる症状が現れた場合は、すぐに動物病院で受診しましょう。

 

犬の慢性腎臓病の治療法は?

犬の慢性腎臓病は、一度進行すると回復できません。
そのため、腎臓に負担をかけない食事療法などで、慢性腎臓病の進行を遅らせるための治療を行います。

適切な食事療法には犬の慢性腎臓病の進行を遅らせる効果があり、食事療法をおこなわなかった慢性腎臓病の犬のよりも寿命が長くなるとの報告があります。※1

※1:Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic renal failure in dogs

 

犬の慢性腎臓病に良い食事

タンパク質・リン・ナトリウムの制限

腎臓病により腎機能が低下すると、残された腎機能のみでタンパク質の有害代謝産物(尿素など)を排泄するため、腎臓に負担がかかります。
そのため、タンパク質を適度に制限し、腎臓の負担を軽減する必要があります。

また、慢性腎臓病が進行すると、リンを効率的に排出できなくなります。慢性腎臓病の犬がリンを過剰に摂取すると高リン血症を引き起こし、死亡リスクが増加するとされています。

さらに、ナトリウムの過剰摂取は血圧上昇を引き起こし、腎臓に負担をかけてしまいます。
心臓病も併発している場合、血圧の上昇は心臓の負担にもなるため、ナトリウムの制限が必要です。

オメガ3系不飽和脂肪酸を含む

オメガ3系不飽和脂肪酸(DHA・EPA)は、ネフロンの毛細血管の炎症を緩和する効果があるという報告があります。※2

※2:Beneficial effects of chronic administration of dietary ω-3 polyunsaturated fatty acids in dogs with renal insufficiency

犬の慢性腎臓病の原因は、ネフロンが加齢などで傷つき、腎機能が低下することで起こります。
そのため、オメガ3系不飽和脂肪酸を含んだ食事を与えることで、ネフロンが傷つくのを遅らせる効果があると期待されています。
ただし、オメガ3系不飽和脂肪酸は酸化しやすいため、与え方に注意が必要です。

 

犬の心臓病・腎臓病の食事には療法食がおすすめ

犬腎臓病 療法食犬の心臓病に良い食事」や「犬の慢性腎臓病に良い食事」で説明した栄養素を、飼い主が手作りの食事で調整するのは極めて困難です。
そのため、犬の心臓病・腎臓病には、それぞれの病気に合わせた最適な栄養・カロリーが配合された療法食がおすすめです。

また、心臓病と腎臓病は、シニア期の犬に併発することが多い病気です。
併発した場合は、犬の状態によって摂取すべき栄養素バランスが異なりますので、獣医師の診断・指導にもとづいて食事療法を進めていきましょう。

 

犬の心臓病療法食

犬の心臓病療法食のおすすめは、心臓の負担となるナトリウムなどを抑え、心臓の働きを維持するために必要なコロイドなどの栄養素を配合したもの選んであげましょう。

 

犬の腎臓病療法食

犬の腎臓病療法食におすすめなのが、腎臓の負担となるリンやタンパク質を抑え、健康維持に必要な量の栄養素やエネルギーなどを配合しているものです。

 

療法食で心臓病・腎臓病の愛犬をサポートしよう

心臓病・腎臓病の犬には、食事療法で病気の進行を遅らせることが重要です。
それぞれの病気に適した療法食を活用し、愛犬のQOLを高めてあげましょう。

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獣医師・宿南章獣医師

投稿者プロフィール
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
   
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
   
【所属団体】 The Royal Society for the Protection of Birds 会員

日本盲導犬協会 会員

野生動物救護獣医師協会 正会員
   
【プロフィール】 1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。

日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。

   
【研修・研究内容】 1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習

1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習

1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)

1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)

1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)

2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修
   
【論文】 Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004
   
【著書】 「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。

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