犬の腎臓病と膵炎の食事、関係について解説

犬腎臓病 膵炎

犬の腎臓病と膵炎の食事、関係について解説

犬の腎臓病と膵炎の原因や症状、併発しやすい理由、食事療法などについて、解説します。

犬の腎臓病と膵炎で気をつけるべきポイント

腎臓病と膵炎は、犬の年齢が上がるにつれ発症しやすい病気です。
腎臓病・膵炎の犬は、以下のような食事に気をつけることが重要になります。

  1. 腎臓病:タンパク質を制限した食事
  2. 膵炎:脂肪分を制限した食事

腎臓病、膵炎の食事は、獣医師の診断にもとづく食事療法をおすすめします。

犬の腎臓病に良い食事は?
犬の膵炎に良い食事は?

 

犬の腎臓病と膵炎は併発しやすい

犬腎臓病,膵炎犬の腎臓病の食事管理ではタンパク質を制限することが重要です。
しかし、タンパク質を制限すると、健康維持に必要なカロリーを十分に摂取できません。
そこで、腎臓病療法食は、十分なカロリーを摂取できるよう脂肪分が多めに配合されています。

一方、犬の膵炎は脂肪分の高い食事をとり過ぎると、発症しやすくなります。
腎臓病の犬の食事は脂肪分が高くなるため、膵炎も同時に発症することがあります。

 

犬の腎臓病とは?

犬腎臓病,膵炎犬の腎臓病とは、腎機能が低下し、腎臓本来の働きができなくなる病気です。
犬の腎臓病は、原因や症状により慢性と急性の2つに分かれます。

  • 慢性腎臓病:腎機能の低下が3ヶ月以上持続する病気
  • 急性腎臓病:数時間〜数日の間に急激な腎機能の低下が起こる病気

上記2つのうち、多くの犬が発症するのが慢性腎臓病です。

 

犬の慢性腎臓病の原因

犬の慢性腎臓病の原因は、加齢などによりネフロンが傷つき、腎機能が低下することによるものです。
犬の年齢が5〜6歳以上のシニア期になると、発症率が高くなる傾向があり、高齢犬・シニア犬では一般的な疾患とされています。

 

犬の慢性腎臓病の症状

犬の慢性腎臓病は、

  • 血液検査によるクレアチニン(CRE)
  • 対称性ジメチルアルギニン(SDMA)

以上2つの濃度によって4つのステージに分類され、ステージの進行状況によって症状が変化します。

慢性腎臓病の症状は、主に以下のようなものが現れます。

  • 食欲が落ちて痩せる
  • 散歩に行きたがらない
  • 寝ている時間が増える

…など。

 

犬の慢性腎臓病の治療法

犬の慢性腎臓病は、一度進行すると腎機能を元に戻すことはできません。
その為、食事管理などで慢性腎臓病の進行を遅らせるための治療をおこないます。

犬の慢性腎臓病は、適切な食事療法により病気の進行を遅らせる効果があり、食事療法をおこなわなかった慢性腎臓病の犬のよりも寿命が長くなるとの報告があります。※1

※1:Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic renal failure in dogs

 

犬の慢性腎臓病に良い食事

犬腎臓病,膵炎犬の慢性腎臓病の食事療法では、腎臓の負担となるタンパク質・リン・ナトリウムなどの栄養素を制限することが重要です。
また、新鮮な必須脂肪酸(オメガ3系不飽和脂肪酸)を多く含んだ食事を与えることで、慢性腎臓病の進行を遅らせる効果があるといわれています。

しかし、これらの栄養素を正確に計測した食事を、手作りで用意するのは極めて困難です。
その為、犬の腎臓病の食事療法では、最適な栄養・カロリーを配合した療法食を活用します。

犬の腎臓病療法食は、一般的なドッグフードと異なり、獣医師の診断・指導にもとづいて与えます。

おすすめの犬の腎臓病療法食

療法食は、各メーカーからさまざまなタイプが開発されています。
まずは小袋タイプのドライフードを試しに与えて、愛犬の食いつきを確認してから通常サイズの療法食を購入するのがおすすめです。

犬の腎臓病療法食の選び方について、こちらの記事で詳しく解説しています。

犬の膵炎とは?

犬腎臓病,膵炎犬の膵炎とは、膵臓の消化酵素(膵液)によって膵臓自体が消化され、炎症を起こすことで起こる病気です。
犬の膵炎は慢性膵炎急性膵炎の2つがあります。
このうち、症例の多くは急性膵炎です。

膵炎はどの年齢でも発症しますが、とくに中・高齢犬で発症しやすく、メスの発症が多い傾向があります。
また、犬の膵炎も腎臓病と同じように、症状が進行すると、機能を回復することはできません。

膵炎になりやすい犬種

遺伝的素因として高脂血症や高リポ蛋血症の多い犬種は、とくに膵炎を発症するリスクが高いとされています。

膵炎になりやすい主な犬種

  • ミニチュア・シュナウザー
  • シェットランド・シープドッグ
  • ヨークシャー・テリア
  • コッカー・スパニエル
  • コリー
  • ボクサー

犬の膵炎の原因

犬の膵炎の原因は多岐にわたり不明な点も多いですが、主に以下のようなものが原因となる場合があります。

原因 症状
食事によるもの ・肥満などによる高脂血症
・高脂肪食の食べ過ぎ
・高タンパク質な食事やトッピングの与えすぎ
代謝異常を起こす病気によるもの ・甲状腺機能低下症
・クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
内分泌疾患によるもの ・糖尿病
他の病気からの併発 ・腎臓病
・心臓病
高脂血症 ・遺伝性などによる突発性高脂血症
・他疾患や肥満にともなう続発性高脂血症
突発的な原因によるもの ・腫瘍、異物などによる膵管の閉塞
・ステロイド剤
・利尿剤など薬剤の誤飲
・獣医師の指導でない漢方薬や薬草類の使用

 

腎臓病の犬が膵炎を併発しやすい理由

犬の膵炎は、腎臓病と併発することが多い病気です。
犬の腎臓病に良い食事」でご紹介したように、腎臓病の食事ではタンパク質を制限する必要があります。
しかし、タンパク質を制限すると、食事から得られるエネルギー量が低下してしまいます。

そこで、腎臓病療法食は、健康維持に十分なエネルギーを補給できるように脂肪が多く配合されています。
そのため、食事の脂肪分が多くなりがちな腎臓病の犬は、膵炎も発症するリスクが高くなる傾向があります。

 

犬の膵炎の症状

犬の膵炎の特徴的な症状は、以下のようなものです。

  • 食欲不振
  • 嘔吐、下痢
  • 腹痛
  • 浅くて速い呼吸

…など

急性膵炎の場合、激しい腹痛を伴うため、愛犬の様子で異常に気づくことが多いです。
上記のような症状が気になる場合は、すぐにかかりつけの動物病院の診察を受けましょう。

慢性膵炎の場合は、他の病気の症状と似ていることから、診断しづらい傾向にあります。
慢性膵炎を症状から特定するのは難しく、さまざまな検査が必要です。

 

犬の膵炎の治療法は?

犬の膵炎の治療法は、制吐剤、鎮痛剤、抗生剤などの投薬や、脱水症状改善のための輸液などが主です。

また、絶食絶水が必要なため、経腸栄養による栄養補給もおこないます。その後の回復状況に応じて、低脂肪食を与えはじめます。

犬の急性膵炎は病院での治療が必要です。気になる症状があらわれたときは、一刻も早く病院で受診しましょう。

 

犬の膵炎に良い食事

膵炎の犬は、膵臓の負担となる高脂肪な食事を避け、消化によいタンパク質を含んだ食事が良いとされています。

しかし、脂肪分を抑えた低脂肪食をただ与えればよいのではなく、良質な脂肪分や、低糖質であることなど、栄養の質やバランスも重要です。

そのため、犬の膵炎に良い食事を手作りするのは極めて困難です。犬の腎臓病に良い食事と同じように、療法食の活用をおすすめします。

 

おすすめの膵炎療法食

犬の膵炎の療法食も、まずは小袋タイプのドライフードを試しに与えて、愛犬の食いつきなどを確認してから通常サイズの療法食を購入しましょう。

犬の膵炎療法食の選び方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

犬が腎臓病と膵炎を併発したらどうすればいい?

犬の腎臓病の食事ではタンパク質の摂取量を控えるため、脂肪量を多くすることでカロリーバランスを取ります。
しかし、膵炎も併発している場合は、脂肪量も控える必要があります。
そのため、腎臓病と膵炎を併発している犬は、適正量の良質な脂肪(オメガ3系不飽和脂肪酸など)、低タンパクなどの食事管理が求められます。

しかし、犬の状態によって栄養素バランスをどのようにとるのか判断が難しいため、獣医師の診断のもとで食事療法をおこないましょう。

腎臓病・膵炎に良い食事で愛犬の健康をサポート

腎臓病・膵炎の犬には、それぞれの臓器に負担をかけない食事が必要です。
しかし、手作りの食事では、病気に適した栄養素を適切に調整するのは困難です。
療法食を活用し、愛犬の健康をサポートしてあげましょう。

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獣医師・宿南章獣医師

投稿者プロフィール
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
   
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
   
【所属団体】 The Royal Society for the Protection of Birds 会員

日本盲導犬協会 会員

野生動物救護獣医師協会 正会員
   
【プロフィール】 1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。

日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。

   
【研修・研究内容】 1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習

1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習

1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)

1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)

1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)

2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修
   
【論文】 Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004
   
【著書】 「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。

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