犬の腎臓病の食事に野菜を与えてもいいの?獣医師が解説
犬の腎臓病の食事と野菜の関係について、以下の内容を解説します。
また、野菜以外に避けたい食材、腎臓病と食事の関係も詳しく紹介します。
目次
犬の腎臓病の食事で野菜を控える理由は?
野菜には、犬に必要な栄養素である「カリウム」が含まれています。カリウムは細胞の浸透圧の調節を担うなど、生命維持に欠かせない栄養素です。
健康な犬は体内の余分なカリウムを腎臓から尿に排出できますが、慢性腎臓病が進行した犬はカリウムを十分に排泄することができません。
そのため、慢性腎臓病の犬が野菜を食べ過ぎると、カリウムを十分に排出できなくなる高カリウム血症や、カリウムを大量に排出してしまう低カリウム血症を発症することもあります。
腎臓病による高カリウム血症は、猫では多く見られる症状ですが、犬ではあまり多くありません。
そのため、腎臓病の犬がカリウムを極端に制限する必要はありませんが、腎臓病が進行した場合は野菜の摂取量を制限する必要があります。
犬の腎臓病の食事で避けたい野菜
カリウムが多く含まれる主な野菜 |
ほうれん草、かぼちゃ、カリフラワー、ゆでたけのこ、じゃがいも、さつまいも、さといも、など |
カリウムはさまざまな食材に含まれていますが、野菜の中でとくにカリウムの含有量が多いのが上記の食材です。
とくに、腎臓病末期の犬に与えるのは避けましょう。
犬の腎臓病の食事で野菜以外に避けたい食材は?
犬の腎臓病の食事には、野菜に含まれるカリウムのほかにも避けたい栄養素が3つあります。
- タンパク質
- ナトリウム
- リン
それではそれぞれについて詳しく見ていきましょう!
肉類などのタンパク質が含まれる食材
タンパク質が含まれる主な食材 |
鶏肉、豚肉、牛肉、馬肉などの肉類、鮭・白身魚などの魚類、卵、チーズ、など |
代謝され老廃物となったタンパク質は腎臓でろ過され、尿素に加工されて尿とともに体外へ排出されます。
しかし、腎臓病により腎機能が低下すると、残された腎機能のみでタンパク質の有害代謝産物(尿素など)を排泄するため、腎臓に負担がかかり腎臓病の進行をさらに早めてしまいます。
そのため、腎臓病の犬は、肉類などのタンパク質を含む食材の摂取量を制限する必要があります。
魚介類などのナトリウムが含まれる食材
ナトリウムが含まれる主な食材 |
魚介類、かつおぶしなどの魚加工品、牛乳などの乳製品、食パン、など |
ナトリウムは細胞の浸透圧調整や、エネルギー代謝などの働きに欠かせない栄養素です。
犬は他の動物と比べナトリウムの耐性が高いため、適量の摂取範囲内であれば問題は起こりづらいとされています。
しかし、腎臓病が進行すると腎臓のナトリウム排出能力が低下するため、ナトリウムを摂取しすぎると血圧上昇などを引き起こします。
とくに、腎臓病と合わせて心臓の病気も持つ犬には、血圧上昇が大きな負担となります。
そのため、腎臓病の犬はナトリウムを含む食事を制限する必要があります。
干し肉などのリンが含まれる食材
リンが含まれる主な食材 |
ジャーキー、小魚の干物などの干し肉、えのき・しいたけなどのきのこ類、大豆・きな粉などの豆類、など |
慢性腎臓病により腎機能が低下すると、リンを効率的に排泄できなくなります。
慢性腎臓病の犬がリンを過剰に摂取すると高リン血症を引き起こし、死亡リスクが高まるとされています。
そのため、腎臓病の犬はリンを含む食材の摂取量を制限する必要があります。
犬の腎臓病の食事と野菜の関係について
犬の慢性腎臓病の原因
犬の慢性腎臓病は、腎臓を構成するネフロンが加齢などで傷つき、腎臓機能が低下することが原因で発症します。
慢性腎臓病を発症すると、老廃物を尿として排泄できなくなります。
そのため、体内に毒素が蓄積され、「尿毒症」など命の危険にかかわる病気を引き起こします。
犬の慢性腎臓病の症状
犬の慢性腎臓病は、血液検査によるクレアチニン(CRE)濃度、対称性ジメチルアルギニン(SDMA)濃度によって4つのステージに分類され、ステージの進行状況によって症状が変化します。
慢性腎臓病の特徴的な症状は、以下のようなものです。
- 食欲が落ちて痩せる
- 散歩に行きたがらない
- 寝ている時間が増える
…など。
犬の慢性腎臓病は食事療法で進行を遅らせる
腎機能は一度傷つくと回復できません。そのため、犬の慢性腎臓病は食事療法などで病気の進行を遅らせることが重要です。
慢性腎臓病の食事療法では、腎臓の負担となるカリウム、タンパク質、リンなどの栄養素を制限し、腎臓に良いとされるオメガ3系不飽和脂肪酸を含んだ腎臓病用療法食を与えます。
犬の慢性腎臓病は、適切な食事療法を行うことで病気の進行を遅らせる効果があり、食事療法を行わなかった慢性腎臓病の犬よりも寿命が長くなると報告されています。※1
犬の腎臓病の食事を野菜で手作りしてもいい?
犬の食事の手作りレシピで紹介されるさつまい、やかぼちゃなどの野菜は、カリウムが多く含まれています。
カリウムは水に溶け出す性質があるため、野菜を茹でることでカリウムの含有量を減らすことが可能です。
しかし、腎臓病の犬に適したカリウム量に調整するには専門知識が必要です。
また、腎臓病の犬の食事は、カリウム以外にもタンパク質、ナトリウム、リンなどの栄養素の調整やカロリー計算も必要となるため、飼い主が腎臓病の食事を手作りするのは極めて困難です。
そのため、犬の腎臓病の食事には、腎臓病に最適な栄養素・カロリーが配合された腎臓病療法食がおすすめです。
犬の腎臓病の食事には野菜に含まれるカリウムを制限した療法食を与えよう
犬の慢性腎臓病は、食事療法による治療が重要です。
手作りの食事では野菜に含まれるカリウム量を適切に調整するのは難しいため、腎臓病用の療法食を活用しましょう。