犬の腎臓病と水分量、飲水のあげ方について解説

犬腎臓病 水

犬の腎臓病と水分量、飲水のあげ方について解説

慢性腎臓病の症状のひとつに、水をたくさん飲む「多飲」があります。
慢性腎臓病の犬が水を多く飲む理由や水分補給の重要性、飲水のあげ方、水分補給とともに大切な腎臓病療法食について獣医師が詳しく解説します。

腎臓病の犬が水を多く飲む理由

犬腎臓病 水

慢性腎臓病により腎機能が低下した犬は、尿を適切に濃縮できなくなるため、薄い尿を大量に排泄する「多尿」の症状が現れることがあります。

その結果、体内の水分が不足し、水をたくさん飲む「多飲」が起こります。
慢性腎臓病の犬が水分を多く飲みたがる時に必要な水分量を確保できないと、脱水症状になる危険性があります。

犬の腎臓病(腎不全)について

犬腎臓病 腎不全

まずは犬の腎臓病(腎不全)の、原因、症状、治療法について詳しく説明していきます。

  1. 犬の慢性腎臓病の原因
  2. 犬の慢性腎臓病の症状
  3. 犬の慢性腎臓病の治療

犬の慢性腎臓病の原因

犬の慢性腎臓病の原因は、主に腎臓を構成するネフロンが加齢などで傷つき、腎機能が低下することによるものです。

犬がシニア期(5〜6歳以上)になると慢性腎臓病の発症率が高くなる傾向があり、高齢犬・シニア犬では一般的な疾患とされています。

腎臓病を発症すると老廃物を尿として排出できなくなるため、体内に毒素がたまり、尿毒症などの症状を引き起こします。

 

犬の慢性腎臓病の症状

犬の慢性腎臓病の特徴的な症状は、以下のようなものです。

  • 多飲多尿
  • ぐったりしている時間や寝ている時間が増える
  • 食欲が落ちて痩せる

…など。

犬の慢性腎臓病は、血液検査によるクレアチニン(CRE)濃度と、対称性ジメチルアルギリン(SDMA)濃度により、以下の4つの進行ステージに分類され、ステージの進行状況によって症状が変化します。

ステージⅠ 犬の慢性腎臓病の初期・早期
ステージⅡ 犬の慢性腎臓病の初期・早期〜中期
ステージⅢ 犬の慢性腎臓病の中期
ステージⅣ 犬の慢性腎臓病の末期

IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)の分類に基づく

犬の慢性腎臓病のステージ2(初期・早期〜中期)の段階では、ほとんどの犬に目立った症状は現れません。
しかし、多飲多尿や、愛犬の反応が少し鈍くなるなどの症状が現れることもあります。

犬の慢性腎臓病のステージ3(中期)の段階になると、食欲不振の症状が多くみられます。
食欲不振の原因として、血液中に尿素がたまることで尿毒症を発症し、胃腸粘膜がダメージを受け、食べ物を飲み込むときに痛みを感じることがあげられます。
痛みを避けるため、食事だけでなく水も飲まなくなるため、脱水症状の危険も高まります。

 

犬の慢性腎臓病の治療

犬の慢性腎臓病は、一度進行すると腎機能の回復はできません。
そのため、腎臓に負担をかけない食事療法などで、慢性腎臓病の進行を遅らせるための治療を行います。

犬の慢性腎臓病は、適切な食事療法を行うことで病気の進行を遅らせる効果があり、食事療法を行わなかった慢性腎臓病の犬よりも寿命が長くなると報告されています。※1

※1:Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic renal failure in dogs

 

犬の腎臓病は水分補給と食事療法が重要

犬腎臓病 水

ここでは、犬の慢性腎臓病において重要な水分補給と、食事療法について解説します。

  1. 水分を多く摂れるよう飲水を用意
  2. 腎臓病療法食を用いた食事管理

水分を多く摂れるよう飲水を用意

犬の慢性腎臓病はステージが進行すると、以下の症状により体内の水分が不足し、脱水症状になる危険性が高まります。

多飲多尿 尿を濃縮する機能が低下し、大量の尿を排泄することによる体内の水分不足
食欲不振 尿毒症により口内炎や胃炎などの症状が現れ、痛みなどから食事や水をとらなくなることによる体内の水分不足

そのため、脱水状態にならないよう、水分を多く摂れるような工夫が必要です。

  • 新鮮な水が飲めるよう、飲水を頻繁に交換する
  • 水が飲める場所を複数設置する
  • 愛犬と外出する際は携帯型の給水器を用意する

愛犬がいつでも新鮮な水が飲めるよう、家の中だけでなく外出時にも気にかけてあげましょう。

腎臓病療法食を用いた食事管理

犬の慢性腎臓病の食事は、以下のような腎臓の負担となる栄養素、腎臓病に必要な栄養素を調整する必要があります。

  • タンパク質の調整
  • リンの調整
  • ナトリウムの調整
  • エネルギー摂取量
  • オメガ3系不飽和脂肪酸

これらの栄養素を飼い主が手作りで毎食用意するのは極めて困難です。
慢性腎臓病の犬に最適な栄養素を配合した腎臓病療法食を活用しましょう。

 

腎臓病で食欲が低下したら、フードに水分を加えるのもオススメ

犬腎臓病 水

犬の慢性腎臓病はステージが進行すると食欲低下の症状が現れるため、腎臓病療法食を食べなくなる場合があります。

腎臓病療法食がドライフードの場合は、水分を加えて柔らかくしてあげると食いつきがよくなる傾向があるのでおすすめです。

また、水分を加えることで不足しがちな水分補給もでき、脱水症状を防ぐ効果も期待できます。

 

愛犬が腎臓病になったら水分量に気をつけよう

犬の慢性腎臓病は脱水症状になりやすいため、愛犬がいつでも新鮮な飲水を飲める環境を整ええてあげましょう。

また、犬の慢性腎臓病は、一度進行すると腎機能の回復は見込めません。
腎臓病の犬のために最適な栄養素を配合した腎臓病療法食で、愛犬の健康をサポートしましょう。

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獣医師・宿南章獣医師

投稿者プロフィール
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
   
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
   
【所属団体】 The Royal Society for the Protection of Birds 会員

日本盲導犬協会 会員

野生動物救護獣医師協会 正会員
   
【プロフィール】 1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。

日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。

   
【研修・研究内容】 1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習

1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習

1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)

1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)

1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)

2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修
   
【論文】 Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004
   
【著書】 「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。

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