犬の腎臓病に良い食材は?食べていいものを解説
腎臓病(腎不全)の犬には、腎機能に負担をかける栄養素を制限する必要があります。そのためには、以下の栄養素を含む食材を調整することが重要です。
これらの栄養素を含む代表的な食材と、腎臓病のために最適な栄養バランスを配合した腎臓病療法食について詳しく解説していきます。
目次
犬の腎臓病に良い食材とは?
1.タンパク質を含む食材は食べる量に注意が必要
肉類に多く含まれるタンパク質は、犬に必要不可欠な栄養素です。
タンパク質は腎臓で代謝され、尿素として尿とともに体外へ排泄されます。
しかし、腎臓病により腎機能が低下すると、タンパク質を代謝するときに出る尿素を十分に排泄できなくなります。
排出できない尿素は体内に蓄積され、尿毒症などを引き起こします。
そのため、腎臓病の犬はタンパク質の摂取量を制限する必要があります。
タンパク質が含まれる主な食材 |
鶏肉、豚肉、牛肉、馬肉などの肉類、鮭・白身魚などの魚類、卵、チーズ、など |
2.リン含有量が少ない食材
慢性腎臓病の犬に、リン含有量を抑えた食事を与えることで腎臓病の進行が緩やかになり、生存率が上昇するとされています。(※1)
しかし、リンはさまざまな食材に含まれており、手作りでごはんを用意するとリンを過剰に与えてしまうリスクがあります。
そのため、腎臓病の犬の食事には、リンなどの栄養素を最適なバランスで調整した腎臓病療法食を活用しましょう。
リンが含まれる主な食材 |
鮭・マグロ・小魚などの魚類、えのき・しいたけなどのきのこ類、大豆・きな粉などの豆類 |
3.オメガ3系不飽和脂肪酸を含む食材
オメガ3系不飽和脂肪酸(DHA・EPA)を含む食材を与えることで、ネフロンの毛細血管の炎症を緩和するという報告があります。(※2)
ネフロンとは、血液中の老廃物をろ過し、尿を生成するなどの働きを担う腎臓の組織です。
ネフロンの炎症を緩和することで、腎臓病の進行を遅らせるといわれています。
慢性腎臓病の原因は、このネフロンが加齢とともに傷つき、腎機能が低下することで起こります。
そのため、オメガ3系脂肪酸を含んだ食事を与えることで、ネフロンが傷つくのを遅らせる効果があると期待されています。
オメガ3系不飽和脂肪酸(DHA・EPA)が含まれる主な食材 |
魚油、脂肪が多い魚類、牡蠣などの魚介類、エゴマ油、アマニ油、など |
4.ナトリウム含有量が少ない食材
ナトリウムは細胞の浸透圧調整やエネルギー代謝などの働きに欠かせないミネラルです。犬は他の動物と比べナトリウムの耐性が高いため、適量の摂取範囲内でしたら問題は起こりづらいとされています。
しかし、腎臓病が進行すると腎臓のナトリウム排出能力が低下するため、ナトリウムを摂取しすぎると血圧上昇などを引き起こします。
腎臓病と合わせて心臓の病気も持つ犬は、血圧上昇が大きな負担となるため、ナトリウム含有量の少ない食材が良いとされています。
ナトリウムが含まれる主な食材 |
魚介類、かつおぶしなどの魚加工品、牛乳などの乳製品、食パン、など |
犬の慢性腎臓病と食べていい食材の関係
犬の腎臓病とは
犬の腎臓病とは、腎臓がダメージを受けて機能が低下し、腎臓本来の働きができなくなる病気です。
腎臓は老廃物を尿として体外に排泄するなど、体の活動を支えるための働きをしています。
また、血液の生産を促進するエリスロポエチンというタンパク質を作ったり、血圧を調整するレニンというタンパク質分解酵素を作るなど、重要な活動を担っています。
犬の腎臓の働きについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。
犬の腎臓病は原因や症状により、以下の2つに分かれます。
- 慢性腎臓病…老化などによる腎機能の低下が原因
- 急性腎臓病…誤飲や事故などが原因
このうち、多くの犬が発症するのが慢性腎臓病です。
犬の慢性腎臓病は、加齢などで「ネフロン」と呼ばれる腎臓の組織が傷つき、腎機能が低下する病気です。
慢性腎臓病には4つの進行ステージがあり、血液検査によるクレアチニン(CRE)濃度、対称性ジメチルアルギニン(SDMA)濃度によって分類されます。
※IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)の分類に基づく
慢性腎臓病ステージ1からステージ2では、目立った症状がほとんど現れません。
血液検査でCRE(クレアチニン)とBUN(尿素窒素)の上昇がみられるステージ3の段階で、ようやく症状が現れ始めます。
腎臓病の進行とともに目立つ症状
犬の慢性腎臓病が進行すると、以下のような症状が目立つようになります。
- 食欲が落ちて痩せる
- 毛づやが悪くなる
- 口からアンモニア臭がする
- 嘔吐や下痢 …など
これらの症状は腎臓病がかなり進行するまで現れません。
気になる症状が現れたらすぐに動物病院で受診しましょう。
犬の腎臓病は早期発見と食事療法が重要
腎機能は一度傷つくと回復できません。そのため、慢性腎臓病を早期発見して、食事療法を早期に開始することが重要です。
犬の慢性腎臓病は、犬の年齢が6歳以上で発症率が増加する傾向にあります。
慢性腎臓病を早期発見するために、愛犬がシニア期(6〜7歳)を迎えたら定期的な検診をおすすめします。
慢性腎臓病発症後は、療法食による食事療法で腎臓病の進行を遅らせることが重要です。
慢性腎臓病の犬に適切な食事療法をおこなうことで、病気の進行を遅らせる効果があり、食事療法を行わなかった慢性腎臓病の犬よりも寿命が長くなると報告されています。(※3)
犬の腎臓病に療法食をおすすめする理由
犬の腎臓病療法食とは、腎機能の負担となる栄養素を抑え、健康維持に必要なエネルギー量を摂取できるよう調整したフードです。
犬の腎臓病の療法食について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
「犬の腎臓病は早期発見と食事療法が重要」でご説明したように、慢性腎臓病は一度進行すると腎臓の機能は元に戻りません。
療法食で腎臓病の進行を遅らせることが、愛犬のQOLを高めることにつながります。
腎臓の療法食の他にも、心臓・膵臓・皮膚・消化器、尿路結石症や食物アレルギーのサポートなどさまざまな療法食があり、症状に合わせて栄養バランスの量が調整されています。
手作りの食事は良くない?
犬の腎臓病に最適な栄養バランスの食事を用意するには、専門的な栄養知識が求められます。
そのため、手作りで腎臓病用の食事を用意するのは極めて困難です。
手作りレシピでよく紹介される鶏肉・牛肉などの肉類などを与えると、タンパク質の過剰摂取になる可能性があります。
また、リンを多く含む肉類や魚介類、大豆類、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)、雑穀類(玄米、トウモロコシなど)も、手作りレシピでよく使われる食材ですが、腎臓病の進行を早めるおそれがあります。
腎臓病の食事は栄養素を正確に計測・計算する必要があるため、手作りで用意するよりも、最適な栄養・カロリーを配合した療法食の活用をおすすめします。
腎臓病療法食の4つのポイント
- 獣医師の診断・指導にもとづいて与える
- 療法食への切り替えは時間をかける
- 適正量を守る
- 新鮮な水をいつでも飲めるようにする
1. 獣医師の診断・指導にもとづいて与える
療法食は獣医師の診断・指導に基づいた食事療法として与える必要があります。
飼い主の中には、腎臓病を発症する前や予防目的で子犬の頃から療法食を与えようとする方がいますが、健康な犬に療法食を与えると必要な栄養素を十分に摂取できず健康を損なうおそれがあります。
2. 療法食への切り替えは時間をかける
腎臓病療法食を与えはじめるときは、1か月程度の時間をかけてゆっくりと切り替えましょう。
療法食は通常のドッグフードと味が異なるため、フードを急に切り替えると愛犬が味の変化にとまどい、食欲不振になることがあります。
普段食べているドッグフードに療法食を徐々に混ぜ、少しずつ慣らしていくのがポイントです。
3. 適正量を守る
療法食は少量でも必要な栄養素を摂取できるよう配合されているので、一般的なドッグフードより給餌量が少なくなります。
療法食の袋などに記載されている食事量を守って与えるようにしましょう。
食事量・ドッグフードの切り替えのポイントは、こちらの記事も参考にしてみてください。
4. 新鮮な水をいつでも飲めるようにする
腎臓病はステージが進行すると、体内に必要な水分量を確保できず、脱水症状になる危険性があります。
そのため、愛犬がいつでも新鮮な水を飲めるような環境を用意し、脱水状態にならないような工夫が必要です。
飲水を頻繁に交換したり、水が飲める場所を複数設置したりしておきましょう。
腎臓病療法食を食べない時は?
愛犬が腎臓病の食事を食べないときは、以下のような工夫をしてみましょう。
- フードを温める
- フードに水分を加えて柔らかくする
- 食事を数回に分けてあげる
- フードにトッピングする
療法食は通常のドッグフードと味が異なり、食いつきが悪くなることがあります。
また、犬の慢性腎臓病はステージが進むと食欲低下などの症状が現れます。
そのため、腎臓病療法食を食べないときは、上記のような工夫で愛犬の食欲をそそるようにしてあげましょう。
詳しい方法は『腎臓病の犬が食事を食べないときの対処法』についての記事をご覧ください。
愛犬の腎臓に良い食材が配合された療法食を
犬の慢性腎臓病は、一度かかってしまうと腎臓の機能を元に戻すことはできません。
そのため、早期に食事療法を開始することが愛犬のQOLを高めます。
腎臓病の愛犬のために、最適な栄養を配合した療法食を取り入れましょう。