犬の肝臓病の症状は?慢性・急性の特徴と早期発見のポイント

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犬の肝臓病の症状は?慢性・急性の特徴と早期発見のポイント 

愛犬の健康管理において、肝臓病は特に注意が必要な問題の一つです。

肝臓は多くの重要な機能を担っており、その健康が損なわれると、犬の全体的な健康状態に深刻な影響を及ぼすことがあります。

この記事では、犬の肝臓病の主な原因とその予防対策について詳しく解説し、飼い主が知っておくべき重要なポイントを紹介します。

犬の肝機能とは

犬の肝機能とは

犬の肝機能とは、主に肝臓における代謝や解毒などの重要な生理活動を指します。

肝臓は犬の体内で非常に重要な役割を果たしており、栄養素の処理、有害物質の解毒、代謝産物の排出といった生命維持に必要な機能を多数持っています。

健康な肝機能は犬の活発な体調を維持する上で欠かせないもので、何らかの異常が起これば、犬の健康に大きな悪影響を及ぼす可能性があるのです。

肝機能検査でわかること

肝機能検査は、犬の肝臓の健康状態を把握するためにとても重要です。

検査では血液サンプルを採取し、肝酵素のレベル、ビリルビンの濃度、アルブミンや総蛋白といった肝機能関連の成分を測定します。

これにより、肝臓が正常に機能しているか、あるいは何らかの異常や病態があるかを判断できます。

また、肝機能検査によって早期に肝疾患を発見し、適切な治療につなげることが可能となります。

早期発見のポイント

定期的なヘルスチェックは、肝臓病を未然に防ぎ、早期に発見するためには大変重要です。

肝臓の数値が通常より高い場合は、それが肝機能障害のサインである可能性もあるため、追加の検査が必要になります。

愛犬が、

・元気がない
・食欲が低下している
・黄疸が見られる
・体重が減った
・嘔吐
・下痢
・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
・腹水(お腹に液体が溜まる)
・行動の変化
・異常な出血や血小板数の低下による出血

などの異常が見られた場合には、迅速に獣医師の診断を受けることをおすすめします。

犬の主な肝臓病

犬の主な肝臓病

ここから、主な肝臓病にについて詳しくお話ししていきます。

慢性肝炎

慢性肝炎は、繰り返す炎症によって肝臓の組織が少しずつ傷つき、最終的には肝硬変へと進行する恐れがある疾患です。

症状は急性肝炎と似ていますが、進行がゆっくりとしていて、長期にわたり症状が顕著に現れないことが多いです。

【主な原因】

  1. 遺伝的要因: 特定の犬種には肝臓疾患を発症しやすい遺伝的傾向があることが知られています。たとえば、ベドリントン・テリアは銅蓄積病の発症が高く、慢性肝炎を引き起こすことがあります。
  2. 長期の薬物使用: 抗生物質や抗炎症薬など、長期にわたる特定の薬物の使用が肝臓に負担をかけ、慢性的な肝損傷を引き起こすことがあります。
  3. 感染症: バクテリアやウイルス、寄生虫などが原因で長期にわたる肝臓の炎症を引き起こすことがあります。これにより肝臓の細胞が徐々に損傷し、慢性肝炎へと進行することがあります。
  4. 栄養不足または不適切な食事: 栄養のバランスが悪い食事や、特定の栄養素の過剰摂取が原因で肝臓に負担をかけることがあります。高銅食は銅蓄積病を悪化させることが知られています。
  5. 自己免疫性の条件: 自己免疫性の問題が原因で、体の免疫システムが肝臓の細胞を攻撃し、慢性的な炎症を引き起こすことがあります。
  6. 毒素: 環境毒素や有害物質が、慢性肝炎のリスクを高める可能性があります。

【治療法】

慢性肝炎の治療には、長期間にわたる管理と定期的な検査が必要です。

治療の土台となるのは食事療法であり、急性肝炎の治療と同様に肝臓に負担のかかりにくい食事が求められます。

また、慢性炎症を抑えるためのステロイド免疫抑制剤が使われることもあります。これらの薬剤は、肝臓へのダメージを最小限に抑えながら炎症を減少させる効果が期待できますが、副作用にも注意が必要です。

急性肝炎

急性肝炎は、犬の肝臓が炎症を起こす病気で、発症すると食欲不振、嘔吐、下痢などの消化器症状のほか、黄疸などが見られることがあります。

【主な原因】

  1. 感染症: バクテリア、ウイルス、寄生虫などが原因で発症することがあります。特に、レプトスピラ症はバクテリアが原因で肝臓に重大な影響を及ぼす病気の一例です。
  2. 毒物摂取: 人間の薬、化学物質、有毒植物など、毒性のある物質を誤って摂取した場合、肝臓に損傷を与えることがあります。特に、アセトアミノフェン(パラセタモール)などの一部の人間用医薬品は犬にとって非常に危険です。
  3. 食事の問題: 不適切な食事や栄養不足も肝臓病のリスクを高めることがあります。特に、高脂肪食は肝臓に負担をかけることが知られています。
  4. 代謝障害: 肝臓は体内の代謝活動に深く関わっており、糖尿病や脂肪肝などの代謝疾患が肝機能障害を引き起こすことがあります。
  5. 自己免疫疾患: 体の免疫システムが誤って肝臓の細胞を攻撃することで、肝臓に炎症が生じることもあります。

【治療法】

これらの原因により急性肝炎が発症すると、犬は急激な体調不良を示すことがあります。

症状を見た場合は、速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。

急性肝炎の治療は、主に病因を特定し、その原因を取り除くことから始まります。感染症が原因の場合は、その感染を抑えるための抗生物質が処方されるでしょう。

また、脱水や電解質のバランスの乱れが見られる場合には、点滴による水分補給と電解質の正常化が不可欠です。

肝臓の負担を減らすため、食事療法が行われることもあります。低タンパク質、低脂肪、高エネルギーの食事が推奨されることがあります。

対症療法として、肝臓の解毒機能をサポートするための薬物も用いられることがあります。

肝障害・肝酵素上昇(臨床症状無し)

犬の肝酵素が上昇するとき、臨床症状を伴わないケースも少なくありません。この状態を肝障害と呼びますが、肝臓の機能に余裕があるため明確な体調の変化が見られないことがあるのです。

しかし、肝酵素の数値が正常範囲を超えることは、何らかの異常のサインである可能性が高く、注意が必要です。

【主な原因】

  1. 薬剤による影響:鎮痛剤、抗生物質、抗炎症薬など、長期間または高用量での薬剤投与が肝臓に影響を与え、肝酵素の上昇を引き起こすことがあります。
  2. 感染症:細菌やウイルス、寄生虫による感染が原因で肝臓が影響を受けることがあります。これらの感染は、肝臓の炎症や組織の損傷を引き起こし、結果として肝酵素が上昇します。
  3. 内分泌疾患:クッシング病(過剰なコルチゾール生産)や糖尿病など、内分泌系の異常が肝機能に影響を与えることがあります。
  4. 毒素:一部の化学物質や毒素(例えば、特定の植物や鉛、化学薬品など)で、肝臓が損傷し、肝酵素が上昇することがあります。
  5. 食事の影響:栄養不足や特定の栄養過剰、食事の不均衡が肝臓に負担をかけることがあります。特に、脂肪の高い食事は肝臓にストレスを与える可能性があります。
  6. 肥満:肥満は、肝臓に脂肪が蓄積する非アルコール性脂肪肝炎(NAFLD)を引き起こす可能性があります。これも肝酵素の上昇の一因となります。
  7. 加齢:高齢の犬の場合、肝臓や細胞の老化が肝酵素の上昇を引き起こすことがあります。

【治療法】

肝酵素の上昇がみられるものの、臨床症状が見られない場合、獣医師はまず経過観察を行うことを選択するかもしれません。

それと同時に、肝臓に負担をかけるような要因を排除することも重要です。

肝機能をサポートするための薬の投与や、抗酸化物質による治療が行われることもあります。

門脈シャント

門脈シャントは、通常は肝臓を通過すべき血液が、異常な連絡路を通じて直接全身循環へと流れてしまう状態をいいます。

有害物質が体内に蓄積し、神経症状成長障害を引き起こすことがあります。

【主な原因】

  1. 先天性門脈シャント:このタイプのシャントは、生まれつき存在するもので、特定の犬種で遺伝的な傾向が見られます。発育過程での異常が原因で、正常には閉じるべき血管が閉じず、生後間もない段階で症状が現れることが多いです。
  2. 後天性門脈シャント:後天性のシャントは、肝臓の疾患や肝臓の血管内の圧力が異常に高まることによって発生します。これは、肝硬変や肝内の塞栓症(血管が詰まること)など、肝臓の障害が引き起こす症状です。

【治療法】

門脈シャントの治療では、可能であれば外科手術が優先されます。シャントの閉鎖や矯正により、正常な血流を取り戻すことが治療の目標です。

しかし、すべての患犬が外科手術の適応となるわけではないため、症例によっては食事療法薬物療法で症状の管理をすることもあります。

肝臓腫瘍(肝臓癌)

肝臓腫瘍は良性のものと悪性のものがありますが、犬の肝臓癌は比較的稀な病気です。

腫瘍が大きくなると腹部の膨張や体重減少、食欲不振などが見られます。肝臓癌の診断は血液検査や超音波検査、CTスキャンなどの医療画像診断を通じて行われます。

【主な原因】

  1. 遺伝的要因:特定の犬種において、肝臓腫瘍が発生する傾向があります。遺伝的な要素が影響している可能性があります。
  2. 年齢:肝臓腫瘍は、中年から高齢の犬に多く見られます。年齢が上がるにつれてがん発生のリスクが高まると考えられています。
  3. 化学物質:生活環境の中で特定の毒素や化学物質に長期間さらされることも、肝臓腫瘍の発生リスクを高める可能性があります。
  4. 食事:栄養不足や特定の食品添加物が、肝臓の健康に悪影響を与え、腫瘍のリスクを高めることがあります。
  5. 慢性的な肝臓疾患:長期にわたる肝臓疾患や肝硬変が肝臓腫瘍のリスクを高めるとされています。慢性的な炎症は、がん化するリスクを増加させる可能性があります。

【治療法】

肝臓腫瘍の治療方法は、癌の種類や進行度、患犬の健康状態によって異なります。

局所的な腫瘍であれば切除が可能な場合もありますが、進行が見られる場合や転移がある場合は、薬物療法放射線治療が行われることもあります。

どの治療法も、患犬のQOL (Quality of Life) を考慮した上で選ばれるべきです。

銅蓄積性肝臓病

銅蓄積性肝臓病は特定の犬種に遺伝的に見られる病気で、肝臓に銅が過剰に蓄積し、慢性的な肝炎や肝硬変を引き起こします。

【主な原因】

  1. 遺伝的要因:特定の犬種で、銅を正常に代謝できない遺伝子変異を持つことがあります。これにより、肝臓に銅が蓄積します。特にベドリントン・テリア、ドーベルマン、ラブラドール・レトリバー、ウェスティなどがこの病気にかかりやすいとされています。
  2. 栄養素の不均衡:銅の過剰摂取や、銅の代謝に必要な他の栄養素(特に亜鉛やモリブデン)の不足から起こる場合があります。市販のドッグフードや特定の食材が高銅含有量である場合、銅蓄積を引き起こす原因となることがあります。
  3. 肝臓の疾患:肝臓の他の疾患が、銅の代謝や排泄プロセスを妨げる可能性があり、結果的に銅が蓄積することがあります。
  4. 環境要因:飲み水など生活環境の中で銅が多く存在している場合、過剰な銅を摂取してしまうことから起こる場合があります。これは一般的な原因ではありませんが、特定の地域や状況下では起こりうることです。

【治療法】

銅蓄積性肝臓病の治療には、病気の進行を抑制し、肝臓へのダメージを防ぐことが重要です。

治療法としては、銅の摂取を制限する銅含有量の低いドッグフードを与えることが基本です。

市販されている多くのペットフードには銅が含まれているため、獣医師の指導のもと適切な食事を選ぶ必要があります。

また、銅の排出を促す薬剤(ペニシラミンやトリエンタインなど)を使用することもあります。これらの薬は体内の過剰な銅をキレートし、尿とともに排泄を助ける作用があります。

食事療法でサポートする肝機能

食事療法でサポートする肝機能

肝臓を正常に機能させるためには、適切な栄養と食事療法が必要不可欠です。

肝機能をサポートする食事療法では、肝臓への負担を軽減する低脂肪、高エネルギー、易消化性の高い食材を中心としたメニューが推奨されます。

毒素が多い食材、例えば玉ねぎやニンニクなどは絶対に与えないようにしましょう。加えて、脱水を防ぐため常に新鮮な水が飲めるようにしてください。

高タンパク質食が肝臓に与える影響

高タンパク質食は、筋肉を構築し、正常な体の機能を維持するために必要な栄養素ですが、肝臓に問題を抱えている愛犬には異なるアプローチが必要です。

肝機能が低下している場合、タンパク質の代謝に関わるアンモニアの量が増加しすぎると、中毒を引き起こす恐れがあるのです。

適切なタンパク質の量を考慮することが重要なポイントであり、肝臓の修復と再生には必要とはいえ、過剰なタンパク質は避けるべきです。

そして、タンパク質の質にも注目が必要で、高品質で消化率の高い動物性タンパク質を選択することが望ましいでしょう。

このバランスを取るために、獣医師に相談しながら、愛犬の必要に応じた食餌管理を行うことが肝機能のサポートにつながります。

愛犬の肝臓病を予防するための実践策

愛犬の肝臓病を予防するための実践策

肝臓の病気に対する実践可能な予防策としては、バランスのとれた食事の提供、定期的な運動、ストレスの管理が挙げられます。

日常生活での予防策と注意点

日々の生活の中でできる愛犬の肝臓病の予防策には、様々なポイントがあります。

適度な運動は血液などの流れを良くし体を健康に保つのに欠かせませんが、過度な運動は逆に肝臓に負担をかけることになるので避けるべきです。

そして、定期的なワクチンや害虫予防も重要です。予防接種やフィラリア予防薬などを使用して、感染症や他の病気から愛犬を守りましょう。

気をつけたいストレス刺激

可能な限りストレスを少なくすることは、愛犬の健康を守るために非常に重要です。

ストレスが多い環境は、自律神経のバランスを崩し、それが肝臓に余計な負担をかける可能性があります。

新しい環境、大きな音、家庭の変化などがストレスの原因になることがあるので、できるだけ安定した環境を提供しましょう。

愛犬の命を守るための肝臓病への理解と対策

肝臓病は犬の生命を脅かす深刻な問題です。

愛犬の健康を守るためには、肝臓の健康を維持することが絶対に欠かせません。

肝臓は体内の毒素を取り除き、栄養を管理する重要な役割を担っています。

感染症、遺伝的要因、不適切な食事など多くの要因が肝臓病を引き起こす可能性があるため、日頃からの正しい食事、適度な運動、定期的な健康診断が非常に大切です。

病気の早期発見と適切な治療が愛犬の命を救うこともありますので、飼い主の方々はこれらの対策を心がけていきましょう。

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